私の車好き=エンジン(発動機)好き、という志向で、図書館から借りてきていたく感激した本を紹介します。
『悲劇の発動機『誉』天才設計者中川良一の苦闘』
誰もが知っている零戦、
そのエンジンは『栄』と言いました。
昭和15年に正式採用された零戦は日中戦争で華々しいデビューを飾り、真珠湾攻撃でも目覚しい活躍をしました。
しかし日本の軍部中枢は、零戦だけでは戦争は戦い抜けないことを認識していました。これからの戦争は零戦の
1000馬力程度の栄エンジンでは絶対的な力量不足、2000馬力級のエンジンが必要と思い開発を中島飛行機に命じていました。
そのエンジンの設計を任されたのが東大を出たばかりの若い技術者=中川良一でした。
その頃の日本の実力は、欧米の発動機の技術を真似するところからやっと脱皮したばかり、そこで中川は『欧米に追いつき追い越せ』とばかりアイデアを振り絞って先駆的なエンジンを設計します。
そして出来上がったのが『誉』
栄より少し大きいだけで倍の2000馬力を実現してしまいます。
しかしそれは試験運転でのこと。ところが軍部の中枢はそれに狂喜してしまいます。
ちょうどその頃、日本は真珠湾を攻撃してアメリカに対する戦争を開始してしまいます。
軍部も後には引けません、誉を使うことを前提にした零戦の後継機を続々と計画してしまいます。
たとえば紫電改、
それ以外に、陸軍、海軍共に疾風、烈風など多くの機種を三菱や中島飛行機へ押し付けます。
本来エンジンの開発は5~10年、機体でも2~5年の期間がかかります。アメリカとの開戦によって、高性能を出すために必要な高オクタン価のガソリンやオイル、高精度な工作機械の輸入、日本では製造できない材料が途絶します。その上飛行機会社の技術者が無計画に兵隊に取られ、製造に従事するのは未経験の素人や学徒に代わります。
そのような中で誉は製造されますが、規定どおりの性能が発揮できないばかりか不具合、故障が頻発し、飛行中エンジンが止まることでの墜落、殉職も多発、エンジンの無い機体が野ざらしになります。
結局終戦までこの混乱は収まらず敗戦となりました。
この本を読んで、戦争中の混乱がもたらした悲劇と言うよりも、我々日本人が陥りやすい、私も陥りやすい思考回路に気づきました。
良いもの、高性能なものを追求する我々は、そのことばかりに目が行って、実際に作ってみてどうなのか? 実際に作れるのか? を、設計開発する段階から計画の中に入れているか?
『良いものを作れば勝てる(売れる)!』という考えだけでは駄目なことを教えてくれます。
今の時代の変化、環境の変化をどのように捉え、克服すべき課題、果たすべき役割を抽出し、その中で一番良い道を全力で歩む、それは今の時代に最も心がけなければいけないテーマではないでしょうか。
『悲劇の発動機『誉』天才設計者中川良一の苦闘』
誰もが知っている零戦、
そのエンジンは『栄』と言いました。
昭和15年に正式採用された零戦は日中戦争で華々しいデビューを飾り、真珠湾攻撃でも目覚しい活躍をしました。
しかし日本の軍部中枢は、零戦だけでは戦争は戦い抜けないことを認識していました。これからの戦争は零戦の
1000馬力程度の栄エンジンでは絶対的な力量不足、2000馬力級のエンジンが必要と思い開発を中島飛行機に命じていました。
そのエンジンの設計を任されたのが東大を出たばかりの若い技術者=中川良一でした。
その頃の日本の実力は、欧米の発動機の技術を真似するところからやっと脱皮したばかり、そこで中川は『欧米に追いつき追い越せ』とばかりアイデアを振り絞って先駆的なエンジンを設計します。
そして出来上がったのが『誉』
栄より少し大きいだけで倍の2000馬力を実現してしまいます。
しかしそれは試験運転でのこと。ところが軍部の中枢はそれに狂喜してしまいます。
ちょうどその頃、日本は真珠湾を攻撃してアメリカに対する戦争を開始してしまいます。
軍部も後には引けません、誉を使うことを前提にした零戦の後継機を続々と計画してしまいます。
たとえば紫電改、
それ以外に、陸軍、海軍共に疾風、烈風など多くの機種を三菱や中島飛行機へ押し付けます。
本来エンジンの開発は5~10年、機体でも2~5年の期間がかかります。アメリカとの開戦によって、高性能を出すために必要な高オクタン価のガソリンやオイル、高精度な工作機械の輸入、日本では製造できない材料が途絶します。その上飛行機会社の技術者が無計画に兵隊に取られ、製造に従事するのは未経験の素人や学徒に代わります。
そのような中で誉は製造されますが、規定どおりの性能が発揮できないばかりか不具合、故障が頻発し、飛行中エンジンが止まることでの墜落、殉職も多発、エンジンの無い機体が野ざらしになります。
結局終戦までこの混乱は収まらず敗戦となりました。
この本を読んで、戦争中の混乱がもたらした悲劇と言うよりも、我々日本人が陥りやすい、私も陥りやすい思考回路に気づきました。
良いもの、高性能なものを追求する我々は、そのことばかりに目が行って、実際に作ってみてどうなのか? 実際に作れるのか? を、設計開発する段階から計画の中に入れているか?
『良いものを作れば勝てる(売れる)!』という考えだけでは駄目なことを教えてくれます。
今の時代の変化、環境の変化をどのように捉え、克服すべき課題、果たすべき役割を抽出し、その中で一番良い道を全力で歩む、それは今の時代に最も心がけなければいけないテーマではないでしょうか。